◎GMSにおける3つの座標系
差分法により計算を行う際、離散化された格子点番号(i, j, k)で空間的位置が管理されていますが、実際の地球上の位置との関連づけは計算者が行う必要があります。GMSでは食い違い格子を用いているため成分ごとに変換式は微妙に異なるため、この関連づけは非常にやっかいな作業ですが、GMSではこの作業をFDMakeが自動的に肩代わりします。
GMSシステムでは、以下の3つの右手系座標を使っています。
- 格子番号座標系 (i, j, k, n)
- 実座標系 (x, y, z)
- 緯度経度座標系 (lat, lon, depth)
【注】GMSでは垂直軸(深さ軸)は常に下方を正とし、地表を原点とします。

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格子番号座標系(IJK座標系)
差分格子の格子番号による座標系で、もっとも基本となるものです。
- 不連続差分格子における位置を表すための座標で、自然数で表現されます。
- 基本的には応力の対角成分の格子点の位置を指しています。
- nは領域番号を表し、上から1,2、と数えます。
- GMSソルバーは食い違い格子(Staggered Grid)を採用しているため、半格子ずれた点を表現するために整数+1/2を用いることがあります。
- 震源、波形出力点の位置を管理するために用います。
- GMSソルバーはこの座標系のみを使用します。
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実座標系(XYZ座標系)
IJK座標系に、格子点間隔(と空間上の原点)の概念を導入することで、実際の距離(長さ)に変換した座標系です。
- 3次元のcartesian座標系で、0以上の実数値をとります。
- 観測点の位置を管理するために用います。
- X、Y軸はそれぞれI、J軸と平行です。
- Z軸は下向きです。
- 震源のStrike角は、北方向から時計回りに計ったX軸の角度で補正されます。
- 格子番号(1,1,1,1)はXYZ座標系の(0,0,0)と同じ点を表します。
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緯度経度座標系(LL座標系)
XYZ座標系が実際の地球上でどの位置(緯度・経度)・方位に関係付けられるかを考慮した座標系です。
- 実際の地球を想定し、緯度・経度・深さで1点を指定する座標系です。
- depth軸はXYZ座標系のZ軸と共通です。
- 実座標系で(0,0,0)の点を緯度経度基準点と呼びます。
- 実座標系とは緯度経度基準点の緯度経度、X軸の方位(direction angle)、緯度経度緯度当たりの距離から決まるアフィン変換(Affine変換、1次変換+平行移動)で第1近似的に結び付けられています。
- GMSソルバーには使用されず、FDMakeでの位置入力、インポート・エクスポート、地図表示のために用いられています。
GMSで計算を行う際には、必ずしも緯度経度座標系を定義する必要はありません。数値実験等の場合には、単にIJK座標系またはXYZ座標系だけを意識すれば十分です。